第99回 語源で学ぼう! ist =~する人・主義者

語源で英単語を学びましょう。語源での英単語学習には以下のメリットがあります。

①関連付けて覚えるので、一度に沢山の単語を覚えられる。
②(①と関連しますが)複数の単語と関連付けて覚えられるので、単語の意味を思い出しやすい。
③スペリングを見ただけで意味を推測できる単語もある。

今回は「ist」= ~する人・主義者 を取り上げたいと思います。

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出典 pixabay

istismize に深く関連した語源ですので、これらを対比しながら見ていきましょう。

ism というと「~主義」を思い浮かべる方が多いかと思います。例えば、altruism =「altrui(他の・他人の)+ism(主義)」で、「利他主義」を意味し、altruist は「利他主義者」となります。

実は「~主義」という意味は近代になって生まれたものです。ism の語源をたどると古代ギリシア語の語尾 -ismos に行き着き、これには「~主義」という意味はありません。英語にも「~主義」以外の ism はたくさんあります。

例えば baptism(洗礼)。動詞形の baptize は「洗礼を施す」を表し、baptist という名詞は「洗礼を施す人」を表します。

baptize に当たる古代ギリシア語は baptizein で、「浸す」などを意味しますが、原始キリスト教の時代に「洗礼を施す」という意味で使われるようになりました。名詞形 baptismos(の変化した baptisma)が「洗礼」、baptistes が「洗礼を施す人」となります。

ここに出てきた3つの語尾はギリシア語で一般的に見られるものです。-izein が動詞、-ismos がその名詞形で、-istes は英語の -er に当たります。これらが英語では -ize、-ism、-ist となりました。

なお、the Baptists とするとキリスト教の一教派(パブテスト)を指します(聖書を信仰の唯一の根拠とし、自覚のない洗礼の意義を否定するのが特徴)。この ist は「~主義者」にあたるように見えますが、the Baptists という表現は「(聖書に則って)洗礼を施す者 baptist の集まり」を表しています。

ism の歴史をまとめると次のようになります。

-ismos型のギリシア語のうち ①「特定のしきたり・方法・傾向を持つ行為」を表す単語(例:baptism)だけが残り、さらに17世紀以降になると ②「特別な行動傾向・信条」を表す単語(例:altruism)や ③「特定の傾向や法則性を持つ現象・構造」を表す単語(例:magnetism =磁気現象、metabolism =新陳代謝)が現れます。

ist の方は ism の①②に対応した「特定の行動をする人・役目の人・専門家」「~主義者」という意味を持つことになります。

最後に、①②に当たる例をいくつか並べて見ておきましょう。

【①の例】
antagonize =「anti(対抗して)+agon(争い)+ize(動詞語尾)」
→「(反感・敵意を持たせるようなことをして)怒らせる」
antagonist =「anti(対抗して)+agon(争い)+ist(する人)」
→「敵対者」

neurologist =「neuro(神経)+logy(学問・専門)+ist(する人・専門家)」=「neurology(神経学)+ist
→「神経学者・神経科医」

instrumentalist =「instrumental(楽器の・器楽曲)+ist(する人)」
→「楽器奏者」

【②の例】
optimize =「opt(最良)+ize(動詞語尾)」
→「最大限に活用する・最適化する」
optimism =「常に最良のこと(opt)が実現すると考えて行動すること」
→「楽観主義」
optimist
→「楽観主義者」

multi-instrumentalist は複数の楽器を演奏できる奏者(マルチプレイヤー)のことです。これとは逆に「声」という一つの楽器を変幻自在な複数の楽器のように使いこなす天才ボーカリスト(vocalist)を2人紹介しましょう。


今回はここまで。ist(接尾辞:~する人・主義者)の残りの英単語も以下の赤枠内のタグをクリックして表示させ覚えてしまいましょう。

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