第93回 語源で学ぼう! cide_cis =切る・殺す

語源で英単語を学びましょう。語源での英単語学習には以下のメリットがあります。

①関連付けて覚えるので、一度に沢山の単語を覚えられる。
②(①と関連しますが)複数の単語と関連付けて覚えられるので、単語の意味を思い出しやすい。
③スペリングを見ただけで意味を推測できる単語もある。


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今回は「cide_cis」= 切る・殺す を取り上げたいと思います。

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出典 pixabay

cide_cis に接頭辞がつくことでさまざまなニュアンスが生まれます。次の3単語をよく見比べてみてください。

decide =「切り(cide)去る(de)、断ち切る、裁断する」→「決定する・決心する」
precise = 「前もって(pre)切って(cise)おく」→「正確な」
concise =「(無駄な部分を)みな(con)切り取る(cise)」→「簡潔な・簡要な」

続いて abscissionincisionab は「離れて」、in は「中へ」を表す接頭辞です。abscission の scis は cis と類縁の語源で、「裂く・切り離す・分ける」を意味します。

abscission は植物学関係で用いられる専門語で、紅葉した葉や熟した実などが自然に脱落することを指します。葉や実と茎・枝の境目には離脱のための層組織が形作られており、「落ちる」時期になると層を成す細胞どうしが徐々に離れていき、ついに abscission が起こります。生理学のレベルで観察すると、植物が自分の体の一部を「切り離して」いるように見えてきます。

incision の動詞形 incise は、語源的には「刃を差し入れ(in)て切り(cis)開く」または「刻みを入れる」ことを表します。英単語としては「(外科手術で)切開する」「(模様や印を)刻み込む・彫刻する」を意味します。incision は「切開」「切り口」です。

一方、形容詞形の incisive は物事に鋭く切り込んでいく様子を表し、「頭の働き・論じ方」などが「鋭い」ことを意味します。

最後に、cide が「殺す」を意味する場合をまとめて見ておきましょう。どの単語も同様の構成を持っており、例えば homicide =「 hom(人間)+cide(殺し)」 =「人殺し」です。日本語の「人殺し」と同じく、 homicide は「殺人」と「殺人者」の双方を指します。以下の最初の4単語も同様です。

patricide =「patr(父)+cide」=「父殺し」
matricide =「matr(母)+ cide」=「母殺し」
infanticide =「infant(幼児・赤ん坊)+ cide」=「幼児殺し・子殺し・間引き」
regicide =「reg(王・支配)+cide」=「王殺し」

herbicide =「herb(草)+cide」=「除草剤」
genocide =「geno(種類・種族)+cide」=「(特定の集団を根絶やしにするための)大量虐殺」

ソポクレスの悲劇などで知られる「オイディプス」は infanticide の被害者になるところを辛くも救われ、やがて意図せずに patricide かつ regicide となります。神託に抗うための行動が裏目裏目に出る物語の筋は完璧さを備えており、現代人をもうならせます。ぜひソポクレスの「オイディプス王」を読んでみてください。下の動画ではこの物語をシンプルに、ユーモアを交えて紹介しています。

尚、KOTOBAにはネイティブスピーカーの実際の発音を聴ける機能があります。inciseincisiveincision で"cis"の発音が異なります。意味を効率よく覚えたついでに各々の単語の以下の箇所で発音もチェックしておきましょう。

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また、cide_cis(語源:切る・殺す)の残りの英単語も以下の赤枠内のタグをクリックして表示させ覚えてしまいましょう。

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語源学習のメリットとして、知識があまりないところからでも難易度の高い英単語までを比較的短時間でカバーできる点が挙げられます。

次回は ab(接頭辞:離れて)について見ていきましょう。

語源 cide の英単語で身近なものがありました! :grinning:

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